属人化のリスクとは?業務標準化を実現するチャットボット活用法を紹介
企業や組織運営において度々問題となる「業務の属人化」。
「属人化とはどうなっている状態なのか」「すでに特定の個人に業務知識が偏ってしまっているが、どのような対策が取れるのか」との疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではそもそも属人化とは何か、またチャットボットによる業務の属人化への対策事例をご紹介いたします。
Contents
属人化とは何か
組織運営において「属人化」とは、業務の遂行、内容の把握が特定の個人に依存している状態を指します。
特定の業務知識や技能が少数の個人に集中し、その個人の力量に業務の遂行、質が左右されてしまうことがある状況です。
このような状況は、緊急の課題解決には対応できるかもしれませんが、長期的な組織の安定性や持続可能性においては大きな懸念を抱えることになります。
さまざまな業務領域における属人化
建設や工場などにおいては専門的な技術、営業の現場においてはお客様とのやり取りなども個人に強く結びつきやすいと言えます。また、人事や経理などの管理部門では、様々な規定や業務の処理方法も個人に結びついていることが多いのではないでしょうか。
このように、業務における専門知識やスキルが個人に偏ってしまうことにより、他のメンバーはその分野に関してほとんど知識を持たない、担当できない状況になってしまいます。
企業の成長を妨げる属人化のリスク
企業において業務が属人化されている部分が増えることには、多くのリスクが伴います。
最も懸念されるリスクとしては、組織の継続性への脅威が挙げられます。
- 休職・退職による業務停滞のリスク
属人化が蔓延した企業では、情報の共有が行われず、個人の裁量が大きいため、その個人が退職したり、休職などで不在になると、業務が停滞するリスクが大きくなってしまうのです。 - 能力の不均衡のリスク
属人化してしまっている業務の遂行は個人のモチベーションにも依存することから、業務に関する能力の不均衡を生んだり、知識やスキルの共有、引継ぎが行われないことで、組織の成長を妨げる可能性があります。 - 企業や組織の競争力喪失のリスク
属人化している部分の業務改善やプロセスの最適化が行われにくい状況も見受けられ、長期的には企業や組織の競争力喪失につながることもあります。 - 人材育成遅れのリスク
業務についての知識が偏ることで、新たな人材の育成が遅れる恐れもあります。知識を共有したくても、属人化している個人に知識も業務負担も集中してしまうため、育成を行うためのリソースを捻出することが難しく、結果として不十分な知識の継承となってしまいます。そうした組織では、現状を踏まえた新しいアイデアや革新が生まれにくい文化が形成される恐れもあります。
属人化がもたらす業務上の問題点
属人化は日々の業務においても複数の問題点をもたらします。
まず、情報やノウハウが特定の個人に集中することで、業務の引き継ぎが困難となりがちです。これにより、新人や他のメンバーが同じ業務を行う際に不確実性や時間のロスが生じ、効率が著しく悪化します。また、属人的となっている業務は、ミスが発生した時に原因究明や対応内容の共有が難しく、組織としての改善サイクルが回りにくくなります。
このように、属人化によって業務の柔軟性が失われ、組織が外部環境の変化に適応する際の障壁ともなり得るのです。
属人化克服へのロードマップ
これまで挙げたように、属人化は組織の持続的な成長を阻む大きな障壁であり、それを乗り越えるためには組織全体での取り組みが必要です。具体的な方法を各人が理解し、チーム全員がその重要性を共有することから始める必要があります。
チームの意識変革
チーム全体の意識の変革は、属人化を克服するうえで最も重要なステップの一つです。
まず、全員がチームでの仕事の進め方について共通の認識をもつことが必要です。それには、個々人の責任を明確にするとともに、他のメンバーの仕事に対する理解も深めなければなりません。すべてのメンバーが互いの役割を理解し、協力して問題を解決することで、個人に依存した属人的な作業体制は次第に解消されていきます。
この変革は組織全体の意識改革から始まりますが、具体的な行動変容への落とし込みまでを行うことが重要です。組織やチームの意識改革には時間がかかりますが、根気強く取り組みましょう。
業務プロセスの文書化と標準化
業務プロセスの標準化には、作業手順を汎用化し、誰もが理解しやすい形式で文書化する必要があります。
これにより、誰もが同様の品質で業務を進められるようになります。
文書化されたプロセスがチーム内で共有されることで、新入社員も迅速に業務を習得できるようになります。
まずは、重要なプロセスから順を追って文書化を進め、全員がアクセスできる形で保管することが大切です。この作業を通じて、業務の透明性が高まり、属人化のリスクを減少させることができるのです。
情報検索の効率化
文書化したプロセスの検索性を向上することも属人化を解消する上で重要なステップです。
せっかく文書化し、共有のファイルサーバで全員がアクセスできる状態にしても、メンバーがその文書を確認できなければ意味がありません。
こうした事態が発生しないよう、情報の検索精度を高めることが重要です。
情報の検索はナレッジ共有ツールやファイル検索ツール、チャットボットを活用することで精度を高め、効率化させることが可能です。
「チャットボット」と「業務属人化」の関係性
業務に関する情報やノウハウが、特定の人物に依存する属人化を解消するためには具体的には何をすれば良いのでしょうか。
解決方法のひとつとしてチャットボットの導入があります。チャットボットの導入は、情報提供の自動化を実現し、属人化を解消する一助となる可能性を持っていますが、その使い方によっては逆効果となる場合も考えられます。それぞれのケースをご説明します。
Case 1 :社内知識の均一化に効果的なチャットボット
属人化の問題の一つに、社内での知識の偏在があり、特定の社員しか知らない重要な操作方法やデータがある場合、その社員が不在の際に業務が停滞することがあります。
このような状況を改善するために、チャットボットを活用することができます。
たとえば、FAQや操作ガイドをチャットボットで社内に提供することで、知識が社内で共有され、必要な情報に誰もが簡単にアクセス可能となります。
企業内での共有知識をチャットボットで管理することで、情報が集約され、検索可能な状態になり、属人化のリスクを軽減することができます
Case 2 :チャットボットが属人化を悪化させる場合も
一方で、チャットボットが属人化を悪化させる場合もあります。
例えば、適切な知識管理や更新が行われていない場合、チャットボットが提供する情報が古いものであったり、間違っていたりすることがあります。
このような情報が流通すると、結果として社員が正しい情報を持つ特定の人物に依存せざるを得なくなってしまいます。
チャットボットが、正確な最新の情報を提供するためにも、常にメンテナンスとアップデートを行うことが求められますが、このプロセスが属人化してしまうと、情報共有ツールであるチャットボットが逆に業務、知識の属人化の温床となる恐れがあります。
Case 3 :業務の属人化を解決するためのチャットボット運用イメージ
上記のように、属人化を解決するためには、適切なチャットボットの導入が非常に有効です。
しかし、チャットボットをただ導入するだけではなく、定期的なレビューと更新が重要であることもご理解いただけたでしょう。
企業は共有知識を継続的にアップデートし、チャットボットが提供する情報が常に最新かつ正確であるようにする必要があります。
そのためにも、チャットボットの運用においても役割を分散し、複数の社員で管理を行なったり、より簡単な操作で利用できるチャットボットを選びましょう。これにより新たな業務の属人化を防ぐことにつながります。
このように、適切な運用を行うことでチャットボットは属人化解消のための強力なツールとなり得ます。
社内チャットボット導入のメリット
業務の属人化とチャットボットの関係についてご説明しましたが、改めてチャットボットを社内利用するメリットは何でしょうか。
昨今のビジネスシーンにおいて、チャットボットの導入は急速に広まっているテクノロジーの一つです。その利用は顧客対応だけでなく、社内利用にも多く利用されています。ここでは、チャットボットを社内導入する利点を深掘りしていきましょう。
①24時間365日、どんな場所でも対応可能
テレワークやフレックスなど様々な勤務体系が一般化していることから「24時間365日、どんな場所からの問い合わせにも対応できる」ことが求められています。それを可能にするのがチャットボットです。
「勤務時間に関係なく問い合わせが可能」というのは、従業員にとって極めて大きな魅力です。
特に、複数の国に拠点を持つ企業や、勤務時間にばらつきがあるサービス業界などにとっては、タイムゾーンの壁を超えた対応が求められる中で、チャットボットは最適な解決策と言えるでしょう。
社内問い合わせに対し24時間対応することが可能になり、各拠点や店舗の業務を停止させず問題解決を促すことが可能なため、従業員満足度を大きく向上させることも期待できます。
②繰り返し業務の工数を削減
社内の取り決めや制度などに関する社内知識の多くは、バックオフィスの関連部門が把握しています。そのため、従業員は業務を遂行する中で不明点をバックオフィスへ問い合わせます。バックオフィス部門担当者は日常的に同じような問い合わせへの対応に追われています。こうした繰り返すルーチンワークは多大な時間と労力を要します。
チャットボットを導入することで、例えばよくある質問への回答や、基本的なトラブルシューティングといった作業を自動化することが可能になります。
そうすることで、人的資源をより戦略的な仕事やクリエイティブなタスクに振り分けることができるようになります。単純作業の自動化は、従業員の仕事の満足度を向上させるだけでなく、ヒューマンエラーを減少させ、全体としての業務効率の向上にもつながると言えるでしょう。
③従業員体験、満足度の向上
チャットボットの導入は、従業員にとって直感的でスムーズな体験を提供します。従業員は社内の規則やルール、情報に対し、自然言語で問い合わせができ、まるで人間と会話しているかのようなやり取りで、情報や知識を得ることができます。
また、チャットボットとの対話を通じて、従業員のニーズに合わせた情報の提供や問題解決を効率的に行うことができることで、従業員満足度の向上に貢献することでしょう。
もしそのチャットボットがマルチチャネルに対応してる場合は、好きなチャンネル(カテゴリ)を選ぶことで、よりスムーズなやり取りができるため、利便性が高まります。
このような従業員体験、満足度の向上は、社内エンゲージメントの向上にも直結します。
関連記事:チャットボット導入のメリットとは?導入時の注意点を解説
チャットボット選定のポイント
では、チャットボットを導入することを検討する際に、どのような点に注意して選定すればよいのでしょうか。
導入成功のためにはチャットボットのを慎重に選択しましょう。数多くの選択肢がある中から、あなたの会社に最も適したチャットボットを見つけるためにはどんな機能が必要で、さらに予算内に収めるためにはどんな配慮が要るかを事前に把握しておくことが必要です。
機能とコストのバランスを検討する
チャットボットを選ぶ際、機能とコストのバランスは非常に重要な要素です。各サービスは固有の特長や利便性を持っているため、価格だけでなく機能やサービス内容も考慮する必要があります。コストパフォーマンスが最も高い製品を目指して、まずは市場調査を行い、何が自社にとって本当に必要な機能であるかを洗い出してください。また、長期的な視点でコストを評価し、アップグレードなど追加の投資が必要になる可能性も考慮に入れましょう。
ビジネスニーズに合ったチャットボットの選び方
ビジネスの目的に完璧にマッチするチャットボットの選定は、多くの企業にとって頭を悩ませる課題です。使用する業界、顧客層、提供したいサービスの種類によって最適なチャットボットは変わります。
例えば、顧客サポートを主な用途とする場合は、より人間らしい応答を生成するAI機能を優先させるべきかもしれません。一方で、社内の業務効率化を図ることが目的であれば、シンプルで統合しやすいシステムを選択することが肝要になります。選定のポイントは、自社のビジネスニーズに最大限に合わせることにあります。
成功のための事前準備
チャットボット導入に向けた成功のカギは、十分な事前準備にあります。まず、目標を明確に設定し、何を達成したいのかを具体的に理解しましょう。次に、チャットボットの導入によって生じる社内外の変化を予想し、従業員や顧客への十分な教育とサポート計画を立てる必要があります。また、データ保護規則に従った運用ができるよう、しっかりとしたセキュリティ対策も必要不可欠です。
計画的に準備を進めることで、導入後の効果を最大限に引き出しましょう。
チャットボットの活用事例
現代のビジネスにおいて、チャットボットは顧客からの問い合わせ窓口や社内業務の効率化など、多岐にわたる場面で活用されています。適切に導入し運用することで、チャットボットは企業とその顧客とのコミュニケーションを画期的に改善する可能性があります。
複数拠点からの社内問い合わせ対応事例
24時間365日の社内問い合わせ対応や、頻繁に発生する問題への迅速な対応が可能になります。チャットボットを導入することで、現場担当者は待機時間なく迅速なサポートを受けることができ、また、問い合わせ対応スタッフはより複雑な問題解決に集中できるようになります。さらにチャットボットによっては、過去の対話から学習するAIを活用しているものもあり、使われ方によってパーソナライズされた対応が可能です。
大手企業内での社内問い合わせ対応時間削減例
各部署からの問い合わせ対応にチャットボットを導入したことで、年間500時間以上の工数削減を実現した例もあります。
規模が大きい企業の場合は、従業員のITリテラシーに幅がある場合があるため、UI(ユーザーインターフェース・操作画面)のわかりやすさが重要になってきます。また多くの部署が存在するため、マルチチャンネルに対応したチャットボットの方が、従業員がより利用しやすいでしょう。
多くの従業員に利用してもらうことで、どういった内容への質問が多いか、またその時期や質問の質まで社内問い合わせ対応の知見がチャットボット内に蓄積されることで、継続した業務効率化が可能になります。
社内ポータルとしての活用
チャットボットを社内ポータルとして活用することで、従業員は自分自身で問題を解決できるようになり、従業員が自立的に行動するようになるだけでなく、社内サポートデスクへの問い合わせの量を削減できます。
FAQの検索や、アカウント関連の問題解決などにチャットボットを活用することで、従業員は待たされることなく求めている情報や回答を得られると言うことは、特に拠点や部署、職種で就労時間が異なる場合に有用です。さらに、チャットボットに従業員からのフィードバックを収集する機能がある場合は、それを課題として社内サービスの改善にも活かしていくことも可能となります。
導入事例一覧はコチラ
導入後のチャットボットの継続的な改善
チャットボットは導入して終わりではありません。様々なユーザの要望に応えるため、継続的な分析と改良が必要不可欠です。このプロセスを通じて、より良いユーザ体験を構築していくのです。
継続的なフィードバックとアップデート
チャットボットは、絶えず進化していくサービスであり、継続的なフィードバック収集がその品質向上に不可欠です。このため、何よりまずユーザの声を聞くことから始めます。フィードバックは、例えば専用フォームやダイレクトメッセージを通して集められ、そのデータの分析により様々なインサイトが提供されることで、ボットの応答精度を上げるアップデートや新しい機能の追加が実施されます。それぞれの改善点をアップデートとして定期的にリリースすることで、利用者にとって価値ある体験を提供し続けることが可能となるのです。
ユーザーからの評価の測定と改善
ユーザーからの評価はチャットボットのサービス品質を測るバロメーターです。そのため、評価システムを設置し、ユーザーが直感的にフィードバックを与えられる環境を作り出すことが大切です。定量的なデータ(星評価など)と定性的なデータ(コメント)の両方を収集し、チャットボットのどの機能が評価されているのか、またどの点に不満があるのかを明確にします。これらの情報をもとにして、問題点の特定と解消、ユーザーイクスペリエンスの向上を目指して改善策を練り、適用していきます。継続的な改善により、利用者の満足度が高まり、さらに社内での利用率向上が期待できます。
新しい技術の統合とチャットボットの進化
テクノロジーの進化は日進月歩です。その波に乗り遅れないためにも、チャットボットは新しい技術を継続的に取り入れる必要があります。具体的には、自然言語処理(NLP)の精度向上、機械学習モデルの最適化、音声認識機能の統合などが挙げられます。新しい技術を統合することで、ユーザーにとってより自然で、人間らしい対話が可能になっていきます。また、最新のトレンドやニーズに合わせて機能を更新し、ユーザーの期待に応えることで、チャットボットは進化を続けます。新技術を用いたイノベーションにより、未来のチャットボットは今にも増して精巧かつ効果的になるでしょう。
まとめ:業務の属人化とその対策
・「業務の属人化」とは、業務の遂行、内容の把握が特定の個人に依存している状態のことで、長期的な組織の安定性や持続可能性に懸念が発生する。
・属人化の解消のためには「チーム全体の意識改革」と「業務プロセスの標準化・文書化」が重要。
・標準化された業務知識の共有と運用においてはチャットボットの活用が効果的。
・チャットボット選定の際は前提として自社のビジネスニーズの把握、必要となる機能がわかりすく、利用しやすいことを重視する。
・チャットボットは導入後も継続的に社内でのフィードバックとアップデートを行うことで、将来的にも業務の属人化を防ぐことができる。
上記を参考にまずはどのような機能が自社で必要か、どのような操作画面であれば自社の目的が達成しやすいかを検討し、業務の属人化解消に取り組んでみてください。